個人事業主やフリーランスとして所得が出てくると、避けて通れないのが確定申告です。freeeやマネーフォワードといったクラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識がなくても銀行明細やカードの取込みから申告書づくりまで進められるようになりました。とはいえ、「ソフトに任せれば全部終わるのか」「どこからは自分で判断しないといけないのか」「そもそも税理士に頼んだ方がいいのか」と迷う場面も多いのではないでしょうか。

この記事では、クラウド会計で確定申告する全体の流れと準備物、青色申告で最大65万円の控除を受ける要件を整理します。そのうえで最大のポイントとなる「会計ソフトで自分でやる範囲」と「税理士に頼んだ方がいい境目」を、売上・取引の複雑さ・消費税やインボイス・法人化の見込みといった具体的な判断軸で線引きしていきましょう。よくある失敗と申告前チェックリストもまとめているので、自分に合った進め方を選べるはずです。

クラウド会計で確定申告する全体像と「自分でやる/税理士に頼む」の違い

確定申告とは、1年間の所得と税額を自分で計算して国に申告する手続きで、freeeやマネーフォワードはその作業の多くを自動化してくれる道具です。 ただし、ソフトが肩代わりするのは「計算と書類づくり」まで。何を経費にするか・どの控除を使うかといった判断は、申告する本人に残ります。まずはこの前提を押さえておくと、自分でやる範囲と税理士に頼む範囲の線引きがしやすくなるでしょう。

国税庁の説明では、確定申告は毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税等の額を計算して確定させる手続きとされています。所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が配当控除額・年末調整で受けた住宅借入金等特別控除額の合計を超える人は、確定申告が必要になります。

クラウド会計ソフトを使うと、確定申告のどこが自動化され、どこに人の判断が残るのか。整理すると次のようになります。

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作業ソフトが自動化してくれる範囲自分(または税理士)の判断が残る範囲
取引の入力銀行・カードの明細を自動取込みし、仕訳を推測する推測された勘定科目が正しいかの確認・修正
経費の計上取り込んだ取引を経費として登録する家事按分(自宅兼事務所の割合など)や事業との関連性の判断
固定資産入力すれば減価償却費を自動計算する何を資産計上するか・耐用年数の選択
書類作成質問に答える形で決算書・申告書を作成する使える控除の選択、消費税の課税・簡易課税の判定
提出e-Taxでの電子申告に対応する期限内に提出したか、内容に誤りがないかの最終確認

ソフトは「入力と計算の手間」を大きく減らしてくれますが、「税務上の判断」までは肩代わりしてくれません。 取引がシンプルで判断に迷う論点が少ないほど自分で完結しやすく、消費税や法人化など判断の重い論点が増えるほど税理士に相談する価値が大きくなります。自分でやる場合と税理士に頼む場合の大まかな違いは、次の表のとおりです。

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比べる点会計ソフトで自分でやる税理士に頼む
費用ソフトの利用料が中心で抑えやすい顧問料や申告料がかかる
かかる手間入力・確認・提出を自分で行う記帳や申告書作成を任せられる
向くケース売上が小さく取引がシンプル取引が複雑・消費税課税・法人化が視野
判断の難所自分で調べて判断する必要がある専門家に相談して決められる
安心感控除漏れやミスに気づきにくい節税の提案やミスの防止が期待できる

参考:国税庁「No.2020 確定申告」

確定申告の前に準備するもの(口座連携・証憑・控除書類)

クラウド会計で確定申告を始める前に、先にそろえておくべきものは「事業のお金の記録」と「控除を証明する書類」の2つに大きく分かれます。 申告期間に入ってから慌てて集めると、控除の取りこぼしが起きやすいもの。年内から少しずつ準備しておくと安心です。

準備物は、性質ごとに整理すると分かりやすくなります。

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準備するもの具体例使う場面
事業の収支記録売上の請求書・通帳・事業用クレジットカードの明細取引の取込み・記帳
経費の証憑レシート・領収書・請求書・契約書経費の計上、後の帳簿保管
口座・カードの連携事業で使う銀行口座・カードのオンライン情報明細の自動取込み設定
控除証明書国民年金・国民健康保険・生命保険料・iDeCoなどの控除証明書所得控除の入力
本人確認・申告用マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)e-Tax・電子申告での本人確認

特に効果が大きいのが、事業で使う銀行口座とクレジットカードをソフトに連携し、明細を自動で取り込めるようにしておくことです。 連携しておけば1年分の取引が自動で取り込まれ、手入力の量を大幅に減らせます。事業用とプライベートの口座・カードを分けておけば、後から取引を仕分ける手間が減り、家事按分の判断もしやすくなるでしょう。

控除証明書は、秋から冬にかけて郵送やマイナポータルなどで届きます。届いたらまとめて保管しておくと、入力のときに探し回らずに済みます。なお、帳簿や領収書などの書類は申告後も一定期間の保存が必要です。提出して終わりにせず、保管まで含めて準備しておきましょう。

クラウド会計での確定申告の一般的なステップ

freeeやマネーフォワードでの確定申告は、「取り込む→確認する→書類を作る→提出する→納付・保管」という流れが、どのソフトでもおおむね共通しています。 細かな画面操作は各社で異なり改定もあるため、具体的な手順は各社公式で最新を確認するのが確実です。ここでは全体の進め方を押さえておきましょう。

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ステップやることポイント
① 初期設定事業情報・申告方法(青色/白色)・口座連携を設定する青色申告は事前の承認申請が前提
② 記帳(取込・仕訳)明細を取り込み、勘定科目を確認・修正する自動推測は便利だが必ず内容を確認する
③ 決算・申告書作成質問に答える形で決算書・申告書を作成する控除の入力漏れがないか見直す
④ 提出e-Tax(電子申告)・スマホ申告・郵送/窓口から選ぶ電子申告は控除や手間の面で有利なことが多い
⑤ 納付・還付算出された税額を納付、または還付を受ける納付期限も忘れずに確認する
⑥ 帳簿の保管帳簿・証憑を一定期間保存する提出後も保管義務が残る

最も時間がかかるのが②の記帳ですが、口座・カード連携と自動仕訳を使えば、取り込まれた仕訳を確認・修正していく作業が中心になります。 ここで勘定科目の選択や家事按分など、自分の判断が必要な部分が出てくるでしょう。判断に迷う取引が多い場合は、この段階で税理士に相談しておくと、後の手戻りを防げます。

提出方法は、国税庁の電子申告システムであるe-Taxを使う電子申告、スマートフォンとマイナンバーカードを使った申告、郵送や窓口での提出から選べます。e-Taxは所得税の確定申告書等の作成・オンライン提出に対応しており、マイナポータル連携による自動入力も案内されています。会計ソフトの多くは、このe-Taxでの電子申告に対応しています。

参考:国税庁「【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)」

青色申告で最大65万円控除を受ける要件(複式簿記・e-Tax/電子帳簿)

節税の効果が大きいのが青色申告です。 最大65万円の青色申告特別控除を受けられますが、控除額は記帳の方法や提出のしかたで65万円・55万円・10万円の3区分に分かれます。freeeやマネーフォワードは複式簿記での記帳に対応しているため、要件を満たせば最大65万円控除を狙いやすくなっています。まずは控除額ごとの要件を整理しましょう。

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控除額主な要件
65万円55万円控除の要件に加え、仕訳帳・総勘定元帳の電子帳簿保存を行うか、確定申告書等の提出をe-Taxで行う
55万円不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営み、複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書等を確定申告書に添付して期限内に提出する
10万円上記の要件に該当しない青色申告者

65万円控除のいちばんの近道は、複式簿記で記帳したうえでe-Taxによる電子申告をすることです。 会計ソフトを使えば複式簿記の記帳と貸借対照表・損益計算書の作成はソフトが担い、e-Taxでの提出もソフトから行えます。つまり、55万円控除の要件に「電子申告」を加えるだけで、65万円控除に届きやすくなるというわけです。

ただし、青色申告そのものを行うには事前の手続きが欠かせません。青色申告をするには「青色申告承認申請書」を、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までに納税地の所轄税務署長へ提出する必要があります。その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、その業務を開始した日から2か月以内が提出期限です。年末に貸借対照表と損益計算書を作成できるような正規の簿記(一般的には複式簿記)によることが原則とされています。

良い進め方は、開業時や年明けの早い段階で青色申告承認申請書を提出し、口座連携と複式簿記の記帳をソフトで進めておくこと。注意したいのは、申請書を出し忘れたまま年を越してしまうケースです。申請が間に合わないと、その年は青色申告ができず白色申告になり、特別控除を受けられません。要件や提出のしかたで迷うときは、早めに税理士へ相談しておくと取りこぼしを防げます。

参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」

参考:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」

自分でやる vs 税理士に頼む境目は「取引量・消費税・法人化・時間価値」で決まる

会計ソフトで自分でやるか税理士に頼むかは、好みではなく「判断の難所がどれだけあるか」で線引きできます。 取引がシンプルなうちはソフトで十分に完結しますが、消費税や法人化など判断の重い論点が増えてくると、ソフトだけでは不安が残りやすくなるもの。まずは、税理士に頼んだ方がよくなる代表的なサインを挙げてみましょう。

  • 取引の数や種類が増え、記帳の確認に時間がかかるようになった
  • 売上が1,000万円に近づき、消費税の課税事業者になるかどうかが視野に入ってきた
  • インボイス制度に対応し、簡易課税にするかなどの判断が必要になった
  • 法人化(法人成り)を検討し始めた
  • 確定申告の時期に、本業に充てる時間が削られている

ひとつの分かりやすい境目が、消費税です。 所得税の確定申告だけならソフトで進めやすい一方、消費税の課税事業者になると、課税方式の選択や計算が一段複雑になり、ソフトの入力だけでは判断しきれない場面が増えます。インボイス制度への対応が絡めば、登録の要否や経過措置の扱いなど、自分で調べて判断するには負担の大きい論点も出てくるでしょう。これらの制度は年度や改正で扱いが変わることがあるため、最新の内容は国税庁などの一次情報で確認し、迷うときは税理士に相談するのが安全です。

ここで大切なのは、すべてを丸投げするか、すべて自分でやるかの二択ではないということ。記帳は自分でソフトを使い、申告書の作成や最終確認だけを依頼する、といった分担も選べます。 自分のフェーズに合わせて分担を変える考え方を、良い例と注意したい例で整理してみます。

良い例は、まず自分でソフトを使って記帳まで進め、消費税や法人化など判断の重い論点が出てきた段階で税理士に相談し、分担を決めるという進め方です。記帳は自分で行い申告書のチェックだけ依頼する、というように、どこまでを自分でやりどこからを税理士に頼むかを費用感とセットで決められると無駄がありません。

一方、注意したいのは、判断の難所が増えているのに「ソフトがあるから大丈夫」と独力で抱え込み、控除漏れや消費税の判断ミスに後から気づくケースでしょう。逆に、取引がごく少ないのに最初から何もかも丸投げしてしまい、費用に見合わないこともあります。確認のしかたとしては、税理士の無料相談で「今の自分は記帳だけ自分でやって申告は頼むのがよいか」「消費税はどう考えればよいか」と具体的に聞いてみてください。自分に合う分担の判断材料が得られるはずです。

確定申告でよくある失敗と、その防ぎ方

クラウド会計を使っても、確定申告の失敗の多くは「期限」「控除」「連携・判断」の3か所で起こります。 いずれも申告前のひと手間で防げるものが大半です。代表的な失敗と防ぎ方を整理しておきましょう。

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よくある失敗起きる原因防ぎ方
青色申告ができず白色になった青色申告承認申請書を期限までに出していない開業時や年明けの早い段階で申請書を提出する
65万円控除のはずが55万円だった電子帳簿保存もe-Taxもしていなかったe-Taxで電子申告し、複式簿記で記帳する
控除証明書の入力漏れ国民年金・保険料などの証明書を集めていない届いた控除証明書をまとめて保管しておく
勘定科目や家事按分の誤り自動仕訳をそのまま確定した取り込んだ仕訳を1件ずつ確認・修正する
口座連携の取りこぼし連携していない口座・カードがある事業で使う口座・カードをすべて連携する
申告・納付が期限に間に合わないスケジュールを後回しにした申告期間と納付期限を早めに把握しておく

特に多いのが、青色申告承認申請書の出し忘れと、控除証明書の入力漏れです。 どちらも「事前の準備」と「申告前の見直し」で防げます。自動仕訳は便利ですが、推測された勘定科目をそのまま確定すると誤りが残りがち。提出前に内容を確認する習慣をつけましょう。

もし期限に間に合わなかったり、提出後に誤りに気づいたりしても、対応できる手立ては用意されています。期限を過ぎてからの申告や、内容を訂正する申告など、状況に応じた手続きがあります。早めに動くほど影響を抑えやすいので、間に合わない・ミスしたと気づいたら、放置せず税務署や税理士に早めに相談してください。

参考:国税庁「令和7年分 確定申告特集」

【チェックリスト】確定申告の前に確認したいこと

ここまでの内容は、申告前の点検にそのまま使えます。記帳を始める前と申告書を出す前に、次のリストで抜け漏れを確かめておけば、控除漏れや期限切れを防げます。 まずは領域ごとに、見るべき観点を整理しておきましょう。

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領域見るポイント
準備口座・カードの連携、証憑・控除証明書の保管
申告方式青色/白色の選択、青色申告承認申請書の提出
記帳自動仕訳の確認、勘定科目・家事按分の判断
控除・税額所得控除の入力、消費税の課税判定
提出・保管提出方法(e-Tax等)、期限、帳簿の保管

そのうえで次の項目を、自分の状況に当てはめて点検してみてください。

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領域チェック項目確認
準備事業で使う銀行口座・クレジットカードをソフトに連携したか
準備レシート・領収書・請求書などの証憑をそろえたか
準備国民年金・保険料・iDeCoなどの控除証明書を集めたか
申告方式青色申告にする場合、承認申請書を期限までに提出したか
記帳自動で取り込まれた仕訳の勘定科目を確認・修正したか
記帳自宅兼事務所などの家事按分を適切に設定したか
控除・税額使える所得控除をもれなく入力したか
控除・税額売上1,000万円前後で、消費税の課税判定を確認したか
提出・保管65万円控除を狙う場合、e-Taxで電子申告する準備ができているか
提出・保管申告期間と納付期限を把握しているか
提出・保管帳簿・証憑を保存する場所を決めているか

チェックの内容で判断に迷う項目があれば、税理士の無料相談で確かめると確実です。 特に青色申告の要件・消費税の判定・家事按分は、誤ると税額に直結します。不安があるうちに相談しておくと安心でしょう。

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まとめ

freeeやマネーフォワードを使えば、口座・カードの連携と自動仕訳で確定申告の手間は大きく減り、複式簿記とe-Taxによる電子申告で最大65万円の青色申告特別控除も狙いやすくなります。一方で、勘定科目の選択・家事按分・控除の取捨・消費税の判定といった「税務上の判断」は本人に残るもの。だからこそ、自分でやるか税理士に頼むかは、取引量・消費税やインボイス・法人化の見込み・かけられる時間といった判断軸で線引きし、「記帳は自分・申告書は依頼」のように分担を選ぶのが現実的です。判断の難所が増えてきたと感じたら、無料相談で自分に合う分担を確かめてみてください。

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