「会社をつくったものの、決算と申告を何から手をつければいいのか分からない」。そんな声をよく聞きます。とくに売上が伸びてきた成長期の中小法人ほど、別表や税務調整が複雑になり、決算前に慌てがちです。法人の決算とは、毎年の事業年度ごとに財務状況と経営成績を確定させ、期限内に正しく申告して納税まで終える法的な手続きのこと。やるべきことは決まっているので、流れさえつかめば怖くありません。

この記事では、法人決算とは何かという基本から、記帳から申告・納税までの全体の流れ、作成する決算書と申告書、必要書類、申告先と税目、提出期限までを整理しました。あわせて、どこを自分でやり、どこを税理士に頼むのが得かを業務工程ごとに切り分け、費用の目安、よくある失敗の防ぎ方、決算前のチェックリストまでまとめています。初めての法人決算でも、準備の全体像がつかめるはずです。

法人決算で大事なのは「期限内に正確に申告し、納税まで終えること」

法人決算で本当に大切なのは、決算書をきれいに作ること自体より、期限内に正しく申告し、納税までやり切ることです。 なぜなら、法人の確定申告は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行う必要があり、遅れるとペナルティが生じるからです。

法人決算とは、1年間(事業年度)の取引をまとめ、利益と財産の状態を確定させ、それをもとに税額を計算して申告・納税する一連の手続きのこと。個人事業主の確定申告と似ているようでいて、対象期間・申告先・作成する書類・期限の決まり方はそれぞれ違います。

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比べる点個人事業主の確定申告法人の決算・申告
対象期間1月1日〜12月31日で固定会社が定めた事業年度(決算月は自由に設定)
主な税目所得税・住民税・消費税など法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税
主な提出書類確定申告書・青色申告決算書など決算書・法人税申告書(別表)・勘定科目内訳明細書など
期限原則として翌年3月15日原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内
難しさ比較的シンプル別表・税務調整が多く、専門知識が必要になりやすい

法人は決算月を自由に決められるため、申告期限も会社ごとに違います。 たとえば3月決算なら原則5月末、12月決算なら原則翌年2月末が申告・納税の期限になります。売上が拡大すると、消費税の課税区分や税務調整が増え、申告書の作成は一段と複雑になるもの。「自分でできるか、税理士に頼むか」を早めに見極めておくことが、慌てない決算につながります。

参考:国税庁「C1-1 法人税、法人住民税及び法人事業税の申告(法人が提出すべき申告書及び添付書類)」

決算から申告までの流れは「記帳→決算整理→決算書→申告書→提出・納税」

法人決算は、いきなり申告書を書くわけではありません。日々の記帳から納税まで、いくつかの工程を順番に進めていきます。 全体の流れをつかんでおくと、どこに時間がかかり、どこを誰に任せるかが見えてきます。

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手順やることポイント
① 記帳・試算表の作成1年間の取引を仕訳して帳簿にまとめ、試算表を作る期中にためずに記帳しておくと、決算がスムーズになる
② 決算整理棚卸・減価償却・引当金・経過勘定などを調整する利益と税額に直結するため、漏れや誤りを防ぐ
③ 決算書の作成貸借対照表・損益計算書などの計算書類を作る会社の財産と1年間のもうけを確定させる
④ 承認手続き株主総会などで計算書類の承認を受ける会社法上の手続き。議事録を残す
⑤ 申告書の作成法人税申告書(別表)などを作成する会計の利益を税務上の所得に調整する作業が中心
⑥ 提出・納税税務署・自治体へ申告書を提出し、税金を納める原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内

この流れの中で、特に手間と専門知識がかかるのが、②の決算整理と⑤の申告書作成です。 日々の記帳が滞っていると、決算直前にまとめて処理することになり、整理や確認に追われてしまいます。逆に、期中からこまめに記帳していれば、決算整理から申告までを落ち着いて進められるでしょう。

成長期の中小法人では、取引量が増えるほど決算整理の項目が多くなり、税務調整の判断も難しくなっていきます。どの工程を社内で回し、どこから税理士に任せるかを決めておくと、決算期の負担を平準化できます。

参考:国税庁「C1-1 法人税、法人住民税及び法人事業税の申告(法人が提出すべき申告書及び添付書類)」

決算・申告で作成する書類は「決算書・申告書・添付書類」の3グループ

法人決算で用意する書類は数が多く感じられますが、役割で分けると「会社の数字を示す決算書」「税額を計算する申告書」「内訳を示す添付書類」の3つに整理できます。

決算書(計算書類)として作成するのは、主に次のものです。

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決算書の種類示す内容
貸借対照表決算日時点の資産・負債・純資産(会社の財産の状態)
損益計算書1年間の収益・費用・利益(会社のもうけの状況)
株主資本等変動計算書純資産が1年間でどう増減したか
キャッシュ・フロー計算書現金の出入りの状況(作成が求められる会社で)

法人税の申告書は「別表」と呼ばれる様式の集まりで、明細書や付表まで含めると多数あります。 とはいえ、すべてを使うわけではありません。会社の規模・業種・適用する特例に応じて、必要なものだけを選んで提出します。一般に、別表一・別表二・別表四・別表五(一)・別表五(二)などは、多くの法人で必要になる基本の様式とされています。別表は様式や記載方法が改正されることもあるため、最新の様式は国税庁で確認するのが確実です。

申告のときには、決算書や申告書に加えて、次のような添付書類も提出するのが一般的です。

  • 勘定科目内訳明細書(売掛金・買掛金などの内訳を示す書類)
  • 法人事業概況説明書(会社の事業内容や状況をまとめた書類)
  • 株主総会議事録など、承認手続きを示す書類

別表は「会計上の利益」を「税務上の所得」に調整するための書類であり、ここでの判断ミスが申告の誤りに直結します。 交際費や減価償却、引当金などの扱いは税務上のルールが細かく、売上規模が大きくなるほど調整項目も増えていきます。書類の種類の多さよりも、この調整を正しく行えるかどうかが、決算・申告のハードルと言えるでしょう。

参考:国税庁「C1-1 法人税、法人住民税及び法人事業税の申告(法人が提出すべき申告書及び添付書類)」

申告先と税目は「税務署・都道府県・市区町村」で分かれる

法人が納める税金は1種類ではありません。税目によって申告・納付する先が分かれます。 「申告は税務署だけで済む」と思い込んでいると、地方税の申告漏れにつながるので注意しましょう。

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税目主な申告・納付先
法人税・地方法人税税務署(国)
消費税・地方消費税税務署(国)
法人住民税都道府県・市区町村
法人事業税・特別法人事業税都道府県

法人税と消費税は税務署へ、法人住民税・法人事業税は都道府県や市区町村へと、申告先が複数にまたがります。 それぞれに申告書を作成・提出する必要があり、地方税は自治体ごとに様式や手続きが定められています。税目や税率・計算方法は改正されることがあるので、各窓口の最新情報で確認しておくと安心です。

消費税についても見ておきましょう。課税事業者であれば、原則として課税期間の終了の日の翌日から2か月以内に、消費税および地方消費税の確定申告書を提出し、納付します。法人の課税期間はその法人の事業年度なので、消費税の申告期限も法人税と同じく、事業年度終了の日の翌日から2か月以内が原則です。 売上が1,000万円を超えるなどして課税事業者になったタイミングでは、消費税の申告がそれまでの負担に上乗せされる点もおさえておきたいところ。

なお、申告書の提出方法には、書面のほか、e-Tax(国税電子申告・納税システム)による電子申告があります。平成30年度の税制改正により、事業年度開始の時に資本金の額等が1億円を超える内国法人などが行う法人税・地方法人税・消費税等の申告は、e-Taxによる提出が義務化されています(大法人の電子申告義務化)。 中小法人は義務ではありませんが、任意で電子申告を利用できます。

参考:国税庁「No.6137 課税期間」

参考:国税庁「大法人の電子申告の義務化について」

申告・納付の期限は「事業年度終了の日の翌日から2か月以内」が原則

法人の確定申告と納税の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。 決算月によって具体的な期日が変わるため、自社の期限を早めに把握しておきましょう。

決算月ごとの申告・納付期限の目安は、次のとおりです。

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決算月申告・納付の期限(原則)
3月決算5月末
9月決算11月末
12月決算翌年2月末
その他の決算月事業年度終了の日の翌日から2か月以内

この2か月は、決算整理から申告書作成、納税資金の準備までをすべて行う期間です。 記帳が遅れていると、この短い期間にまとめて作業することになり、ミスや遅延のリスクが上がってしまいます。

一方で、定款の定めや特定の事情がある場合には、「申告期限の延長の申請」という制度があります。所定の要件・手続きを満たすことで、確定申告書の提出期限を延長できる仕組みです。ただし、延長できるのは申告書の提出期限であって、納税そのものを待ってもらえるわけではありません(延長期間に応じて利子税がかかる場合があります)。 どのようなケースで、どれだけ延長できるかは要件によって異なるため、利用を検討する場合は税理士や税務署に確認するのが確実です。延長を使うには事前の申請が必要なので、決算月を踏まえて早めに準備しておきましょう。

参考:国税庁「C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」

自分でやる範囲と税理士に頼む範囲は「工程ごと」に分けて考える

決算・申告は「全部自分でやる」か「全部丸投げ」かの二択ではありません。記帳・決算整理・申告書作成・節税提案という工程ごとに、どこを社内でやり、どこを税理士に任せるかを切り分けると、費用対効果よく進められます。

工程ごとの分担の考え方を整理すると、次のようになります。

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工程自分でやる場合税理士に頼む場合
日々の記帳クラウド会計で自動取込・仕訳を社内で行う記帳代行として領収書・通帳から仕訳を任せる
決算整理棚卸・減価償却など簡易なものを自分で処理引当金・経過勘定など判断が要る整理を任せる
申告書(別表)作成取引がシンプルなら自分で作成も可能税務調整・別表作成を任せ、誤りを防ぐ
節税・経営の提案自分で情報収集して判断する決算前に節税策や資金繰りの提案を受ける

決算・申告を税理士に頼むかどうかは、良い例と注意したい例で考えると判断しやすくなります。

良い例は、自社が日々の記帳をクラウド会計で回し、判断の難しい決算整理と別表作成、節税提案を税理士に任せる形です。 数字を自分で把握しながら、専門知識が必要なところだけプロに頼むので、費用を抑えつつ申告の正確さを保てます。

一方で注意したいのは、すべてを税理士に丸投げして、自社の数字をまったく把握していない状態。 経営判断に必要な月次の数字が分からず、決算で初めて結果を知ることになり、節税の打ち手も間に合いません。かといって、知識が不十分なまま別表まで自分で作ろうとして、税務調整を誤るのも避けたいところです。

確認のしかたとしては、税理士への問い合わせや面談で、次のように工程ごとの対応範囲を聞いてみましょう。依頼範囲の見積もりがはっきりします。

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確認したいこと聞き方の例
含まれる作業見積もりには記帳代行・決算整理・別表作成のどこまで含まれますか
税務調整の対応別表の作成や税務上の調整まで対応してもらえますか
期限延長の提案申告期限の延長が必要なケースでは提案してもらえますか
決算前の相談決算を迎える前に、節税や納税資金の相談はできますか

税理士費用の目安は「決算のみ」か「顧問契約か」で大きく変わる

税理士費用は、依頼する範囲によって大きく変わります。だからこそ、決算料・記帳代行・スポット対応まで含めた総額で比べることが大切です。 月額の顧問料だけを見て安く感じても、決算料や記帳代行が別料金で、合算すると割高になることがあるからです。

依頼の形は、大きく次の3つに分かれます。

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依頼の形任せられる範囲費用の目安向いているケース
決算申告のみ(スポット)決算書・申告書の作成と提出一般に目安として15万〜25万円程度。規模や記帳状態で幅が大きい記帳は自社でできるが、申告だけ任せたい
記帳代行+決算記帳代行に加えて決算・申告まで記帳代行の費用に決算料が加わる記帳の手間を減らし、申告もまとめたい
顧問契約月次の確認・相談に決算・申告を含む月額顧問料+決算料。決算料は一般に月額の数か月分が目安継続して相談し、節税提案も受けたい

決算申告のみのスポット依頼の費用は、一般に目安として15万〜25万円程度とされますが、売上規模・記帳の状態・依頼範囲によって幅が大きいのが実情です。 記帳が整っていれば安く、決算直前に1年分の記帳から依頼すると高くなる傾向があります。

費用を比べるときの良い例は、複数の事務所から相見積もりを取り、決算料・記帳代行・スポット対応まで含めた年間総額でそろえて比較する形です。注意したいのは、「月〇円から」という月額の安さだけで決めてしまうこと。 決算料や別料金の条件があいまいだと、後から想定より高くつくことがあります。見積もりを取るときは、何が料金に含まれ、何が別料金になるかを書面で確認しておきましょう。

決算でよくある失敗と、その防ぎ方

ここまで見てきた工程は、裏を返せば「失敗が起きやすい場所」でもあります。決算でつまずく多くは、特別なトラブルではなく、日ごろの準備と事前確認で防げるものばかりです。

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よくある失敗起きる原因防ぎ方
決算直前に記帳が終わらず慌てる期中に記帳をためてしまったクラウド会計で日々記帳し、月次で残高を確認する
申告期限に遅れてしまった自社の決算月と期限を把握していなかった決算月から逆算した申告スケジュールを早めに引く
申告期限延長の申請が漏れた延長には事前申請が必要と知らなかった延長が必要かを決算前に税理士へ相談する
別表の記載・税務調整を誤った税務上のルールを十分に理解していなかった別表作成・税務調整を税理士に任せる
納税資金が足りず慌てる税額の見込みを立てていなかった決算前に税額を試算し、納税資金を準備する
丸投げで自社の数字が分からない資料を渡すだけで中身を確認していない月次・決算の内容を説明してもらう習慣をつくる

どれも「忙しいから」「来年でいいだろう」と、準備や確認を後回しにしたときに起こりがちです。 特に成長期の中小法人では、売上拡大で取引が複雑になり、消費税の課税区分や税務調整でつまずきやすくなります。決算前に一度、記帳の進み具合・期限・納税資金・依頼範囲を点検しておけば、こうした失敗の多くは避けられるでしょう。

【チェックリスト】決算前に確認したいこと

ここまでのポイントは、決算前の点検にそのまま使えます。決算を迎える前に、次のリストで抜け漏れを確かめておくと、慌てずに申告・納税まで進められます。

まずは領域ごとに、見るべき観点を整理しました。

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領域見るポイント
スケジュール自社の決算月と申告・納税の期限、延長の要否
書類決算書・申告書・添付書類の準備状況
費用・資金税理士費用の見積もり、納税資金の準備
対応範囲記帳・決算・申告・節税のどこを誰がやるか
クラウド対応クラウド会計でのデータ共有・オンライン完結
契約業務範囲・別料金・解約条件の確認

次の項目を、自社の状況に当てはめて点検してください。

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領域チェック項目確認
スケジュール自社の決算月と、申告・納税の期限を把握しているか
スケジュール申告期限の延長が必要かを事前に検討したか
書類決算書・法人税申告書・添付書類の準備が進んでいるか
書類期中の記帳が終わり、試算表で残高を確認したか
費用・資金税理士費用を、決算料・記帳代行込みの総額で確認したか
費用・資金納税資金の見込みを立て、準備できているか
対応範囲記帳・決算整理・別表作成・節税提案の分担を決めたか
対応範囲別表作成や税務調整まで対応してもらえるか確認したか
クラウド対応freee・マネーフォワード・弥生でデータを共有できるか
クラウド対応資料のやり取りがオンラインで完結できるか
契約見積もりに含まれる範囲と別料金を書面で確認したか

チェックの内容は、税理士への無料相談や面談で実際に質問して確かめると、より確実になります。 見積もりの説明と実際の対応範囲が一致しているかどうか、契約前にしっかり見ておきましょう。

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まとめ

法人決算で大切なのは、決算書を作ること自体より、期限内に正しく申告し、納税までやり切ることです。記帳から決算整理、決算書・申告書の作成、提出・納税という流れを押さえ、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内という期限を、自社の決算月から逆算して把握しておきましょう。記帳・決算整理・別表作成・節税提案という工程ごとに、自分でやる範囲と税理士に頼む範囲を切り分ければ、費用を抑えながら正確な申告ができます。税理士費用は決算料・記帳代行まで含めた総額で相見積もりし、決算前にはチェックリストで準備状況を点検しておけば、慌てずに決算を終えられるはずです。

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