「インボイス制度が始まったけれど、自分は登録すべきなのか、免税のままでよいのか分からない」。個人事業主やフリーランスで、こう迷っている方は少なくありません。取引先から登録番号を聞かれたり、登録しないと取引を見直すと言われたり、不安になるケースもあるでしょう。制度の言葉が難しく、免税事業者・課税事業者・適格請求書発行事業者といった用語が入り混じるため、結局どうすればいいのか見えづらいのです。

そこでこの記事では、インボイス制度とは何かを基本から整理し、個人事業主・免税事業者への影響、登録するか免税のままかの判断軸、2割特例や経過措置の最新スケジュール(2026年6月時点)、そして登録のやめ方までをまとめました。良い対応の例と注意したい例、確認のしかたをセットで紹介し、最後に対応を点検できるチェックリストも用意しています。読み終えるころには、自分はどうすべきかを判断できるはずです。

インボイス制度とは「正確な税率と消費税額を伝える仕組み」のこと

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための請求書(インボイス)をやり取りし、それを保存することで消費税の仕入税額控除を受けられる仕組みです。 令和5年(2023年)10月1日から始まりました。消費税に8%と10%の複数税率があるなか、どの取引にどの税率がかかっているかを正しく伝えるために導入されたものです。

ここでまず押さえたいのが、混同しやすい用語の区別。インボイス制度を理解するには、「免税事業者・課税事業者・適格請求書発行事業者」の3つを切り分けることが第一歩になります。

横にスクロールできます
用語意味
免税事業者消費税の申告・納付が免除されている事業者(基準期間の課税売上高1千万円以下などが目安)
課税事業者消費税を申告・納付する義務がある事業者
適格請求書発行事業者税務署長の登録を受け、インボイスを交付できる事業者(登録すると課税事業者になる)

従来の「区分記載請求書」と、インボイス制度の「適格請求書」では、求められる記載と役割が変わりました。最大の違いは、登録番号などが記載された適格請求書がないと、買い手が消費税の仕入税額控除を受けられなくなった点です。

横にスクロールできます
比べる点従来(区分記載請求書)インボイス制度(適格請求書)
発行できる人誰でも発行できる登録を受けた適格請求書発行事業者のみ
登録番号不要必要
仕入税額控除区分記載請求書の保存で控除できた原則として適格請求書の保存が控除の要件
主な目的軽減税率の区分表示正確な税率・消費税額の伝達と控除の適正化

仕入税額控除とは、事業者が納める消費税を計算するとき、売上にかかった消費税から、仕入や経費にかかった消費税を差し引ける仕組みのこと。買い手が仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書発行事業者から交付を受けたインボイスと、一定事項を記載した帳簿の保存が必要になります。

参考:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」

参考:国税庁「インボイス制度について」

適格請求書発行事業者になるには税務署長への登録申請が必要

インボイス(適格請求書)を交付できるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけです。 交付するには、登録申請書を税務署長に提出して登録を受けなければなりません。ここでは、登録の方法と、適格請求書に必要な記載事項を見ていきましょう。

  • 適格請求書に記載が必要な6項目
  • 登録の申請方法(e-Tax・書面)
  • 免税事業者が登録するときの注意点

適格請求書に記載が必要な6項目

適格請求書には、決められた6つの事項を記載しなければなりません。どれか一つでも欠けると、適格請求書として認められず、買い手の仕入税額控除に影響することがあります。

横にスクロールできます
記載事項内容
発行事業者の氏名・名称及び登録番号売り手の名前と、登録で割り当てられた登録番号
取引年月日取引を行った日付
取引内容何を取引したか(軽減税率の対象品目である旨を含む)
税率ごとの対価の額及び適用税率8%・10%など税率ごとに区分した合計金額と税率
税率ごとに区分した消費税額等税率ごとに計算した消費税額
交付を受ける事業者の氏名・名称買い手の名前

良い対応の例は、請求書ソフトや会計ソフトで、登録番号と税率ごとの消費税額が自動で正しく出力される状態にしておくこと。逆に注意したいのは、登録番号の記載漏れや、税率ごとの区分がない請求書を使い続けてしまうケースです。自分が使っているソフトで6項目が正しく出るかを、一度実際の請求書で確かめておくと安心でしょう。 なお会計・請求書ソフトの具体的な設定方法や料金は変わることがあるため、最新は各社公式でご確認ください。

参考:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」

登録の申請方法(e-Tax・書面)と免税事業者の注意点

登録申請は、e-Taxまたは書面(郵送)で行えます。 e-Taxでは「e-Taxソフト」や「e-Taxソフト(WEB版)」で作成・提出ができ、書面の場合の提出先は各国税局のインボイス登録センターです。登録を受けると登録番号が割り当てられ、国税庁の公表サイトで誰でも有効性を確認できるようになります。

ここで個人事業主・フリーランスが特に注意したいのが、免税事業者の扱いです。免税事業者は、そのままでは適格請求書発行事業者の登録を受けられません。登録するには課税事業者になる必要があり、登録した時点で消費税の申告・納付義務が生じます。 つまり「登録するかどうか」は、同時に「課税事業者になるかどうか」の判断でもあるのです。

良い対応の例は、登録によって消費税の納税が発生することを理解したうえで、取引先の状況や税負担といった判断軸を踏まえて決めること。一方で注意したいのは、取引先に言われるまま、影響を確かめずに登録してしまうケースです。確認のしかたとしては、登録前に「自分の取引先は本当にインボイスを必要としているか」「登録した場合の納税額はどのくらいか」を整理しておくと、判断のブレを防げます。

参考:国税庁「D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」

参考:国税庁「インボイス制度について」

免税事業者への影響は「課税転換・2割特例・経過措置」で整理できる

インボイス制度で最も影響を受けやすいのが、これまで消費税を納めてこなかった免税事業者です。 登録すれば課税事業者として納税が始まり、登録しなければ取引先から敬遠される可能性がある、という板挟みになりがちだからです。ここでは影響を3つの観点で整理していきましょう。

  • 課税転換による納税の負担
  • 負担を軽くする2割特例(と今後の3割特例)
  • 取引先が払う消費税を抑える経過措置

課税転換すると消費税の納税義務が生じる

免税事業者が登録して課税事業者になると、これまで免除されていた消費税の申告・納付が必要になります。 売上にかかった消費税から仕入・経費にかかった消費税を差し引いた額を納めることになり、その分だけ手取りが減る要因になります。

一方、登録しないままだと、取引先(買い手)がその仕入れについて仕入税額控除を受けにくくなります。そのため「取引を見直したい」「消費税分を値引きしてほしい」と求められる懸念があるのです。登録するかしないかは、納税負担と取引への影響を天秤にかけて決める判断と言えます。 どちらが有利かは取引先の性質や自分の税負担によって変わるため、一律の正解はありません。

2割特例は令和8年で終了、個人事業者には3割特例

2割特例とは、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった事業者が、消費税の納付税額を「売上げにかかる消費税額の2割」にできる負担軽減措置のことです。 事前の届出は不要で、確定申告書にこの特例の適用を受ける旨を付記すれば使えます。なお、基準期間の課税売上高が1千万円を超える事業者などは対象外です。

ここで時点に注意してください。令和8年度税制改正により、2割特例は延長されず、令和8年9月30日が属する課税期間までで終了します(2026年6月時点)。 そのうえで個人事業者については、令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において、納付税額を「売上税額の3割」とできる「3割特例」が設けられます。古い解説では2割特例が続く前提のものもありますが、最新のスケジュールで判断しましょう。

横にスクロールできます
特例納める額の目安対象・時期
2割特例売上にかかる消費税額の2割令和5年10月1日〜令和8年9月30日の属する課税期間
3割特例(個人事業者)売上税額の3割令和9年分・令和10年分の消費税確定申告

参考:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」

参考:国税庁「令和8年度税制改正特集」

経過措置の控除割合は段階的に引き下げられる

経過措置とは、免税事業者など適格請求書発行事業者でない相手からの仕入れでも、一定割合を仕入税額控除できる仕組みで、買い手側の負担を和らげるためのものです。 これは免税のままでいる売り手にとっても、取引先が控除を受けられる分、取引を続けてもらいやすくなる意味を持ちます。

控除できる割合は、段階的に引き下げられていきます(2026年6月時点)。当初の予定から延長・緩和され、令和13年9月末まで一定割合を控除できることになりました。

横にスクロールできます
期間控除できる割合
令和8年10月1日から2年間70%
令和10年10月1日から2年間50%
令和12年10月1日から1年間30%
令和13年10月1日以降控除不可

令和8年度税制改正後のスケジュールでは、令和8年10月1日から70%、令和10年10月1日から50%、令和12年10月1日から30%、そして令和13年10月1日以降は控除できなくなります。 制度開始当初に示されていた「80%→50%」という段階から見直され、引き下げが緩やかになりました。古い情報のままだと割合や時期を取り違えやすいので、最新の数値で確認してください。

参考:国税庁「令和8年度税制改正特集」

参考:国税庁「インボイス制度について」

買い手側は「インボイスの確認・保存」で仕入税額控除を守る

取引先からインボイスを受け取る買い手(課税事業者で本則課税の場合)は、受領したインボイスを正しく確認・保存することで、仕入税額控除を守ることができます。 売り手側だけでなく、買い手側にも実務上の対応が求められるわけです。

  • 受け取ったインボイスが6項目を満たしているかを確認する
  • 登録番号が有効かを確認する
  • インボイスと帳簿を保存する

良い対応の例は、受け取った請求書に登録番号や税率ごとの消費税額が正しく記載されているかを確認し、必要に応じて国税庁の公表サイトで登録番号の有効性を確かめること。注意したいのは、登録番号の記載がない請求書をそのまま処理し、控除できない仕入れを見落とすケースです。買い手にとっては、誰がインボイスを出せる相手で、誰が出せない相手かを把握しておくことが、納税額の管理につながります。

確認のしかたとしては、取引先ごとに「インボイス発行事業者かどうか」「登録番号は何か」を一覧で管理しておくと、経理処理がスムーズになるでしょう。会計ソフトで登録番号の有無や税率を取り込めるよう設定しておけば、確認の手間も減らせます。なおソフトの具体的な機能や料金は変わることがあるため、最新は各社公式でご確認ください。

参考:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」

登録するか免税のままかは「取引先のタイプ」と「税負担」で判断する

登録すべきか免税のままでいるかは、自分の取引先がインボイスを必要としているか、そして登録した場合の税負担がどの程度かで判断します。 一律に「登録したほうがよい」「しないほうがよい」とは言えず、相手によって結論が変わるからです。

まずは取引先のタイプごとに考え方を整理しましょう。ポイントは、取引先が仕入税額控除を必要とするかどうかです。

横にスクロールできます
主な取引先インボイスの必要性考え方の目安
課税事業者で本則課税必要とされやすい登録を求められやすく、登録を検討する余地が大きい
一般消費者基本的に不要仕入税額控除と無関係なため、登録の必要性は低い
免税事業者・簡易課税の取引先不要なことが多い相手が控除計算でインボイスを使わないため影響は小さい

そのうえで、登録して課税事業者になる場合は、消費税の納め方によって負担と手間が変わります。2割特例・簡易課税・本則課税を同じ土俵で比べ、税負担と事務手間の両面で選ぶことが大切です。

横にスクロールできます
計算方法特徴向きやすいケース
2割特例売上税額の2割を納税。事前届出不要・申告で選択対象期間中の小規模事業者(時期に注意)
簡易課税売上税額に業種別のみなし仕入率を掛けて計算。事前の届出が必要・基準期間の課税売上高5,000万円以下が要件経費が少なく、事前に届出を出せる場合
本則課税実際の仕入・経費の消費税を差し引いて計算設備投資などで仕入れの消費税が大きい場合

良い判断の例は、取引先にインボイスが必要か確認したうえで、登録した場合の納税額を計算方法ごとに比べて決めること。注意したいのは、取引先の事情を確かめずに登録し、必要のない納税負担を負ってしまうケースです。確認のしかたとして、主要な取引先に「インボイスの登録番号が必要かどうか」を聞き、あわせて自分の売上・経費の状況から納税額の見込みを試算しておくと、判断材料がそろいます。 計算方法の有利不利や申告は、税理士に相談して確かめると確実でしょう。

参考:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」

登録のやめ方も知っておく|取消届出書と「2年縛り」

インボイス制度は、登録すれば終わりではなく、「やめ方」まで理解しておくことが、後悔しない対応につながります。 いったん登録しても、状況が変われば登録を取りやめ、要件を満たせば免税事業者に戻ることもできるからです。

登録を取りやめるには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書(取消届出書)」を税務署長に提出します。提出のタイミングによって、登録の効力がなくなる時期が変わるため、提出期限に注意が必要です。 取りやめたい課税期間の前に、決められた期日までに提出しなければなりません。

あわせて意識したいのが、いわゆる「2年縛り」。免税事業者が登録して課税事業者になった場合、一定の条件のもとで、原則として2年間は課税事業者としての申告・納付が続く点に注意してください。 「思っていたより負担が重いからすぐ免税に戻る」とはいかないことがあるため、登録前にこの拘束も含めて考えておきましょう。

良い対応の例は、登録前から「やめる場合の手続きと時期」「2年縛りの有無」まで確認しておくこと。注意したいのは、入口(登録)の手続きだけを見て、出口(やめ方)を考えずに登録してしまうケースです。確認のしかたとして、取消しの届出期限や2年縛りの適用は個別の状況で変わるため、判断に迷うときは税理士に相談すると安心です。

参考:国税庁「No.6629 消費税の各種届出書」

【チェックリスト】インボイス対応で確認したいこと

ここまでの内容は、自分の対応を点検するのにそのまま使えます。登録を判断する前や、登録後の実務を整える前に、次のリストで抜け漏れを確かめておくと、後悔やミスを防げます。

まずは領域ごとに、見るべき観点を整理しましょう。

横にスクロールできます
領域見るポイント
取引先取引先がインボイスを必要とするか(本則課税か、消費者か)
税負担登録した場合の納税額、2割特例・簡易課税・本則課税の比較
手続き登録申請の方法、必要な6項目、登録番号の管理
実務会計・請求書ソフトでの正しい出力、インボイスの保存
出口取消届出書の期限、2年縛りの有無

次の項目を、自分の状況に当てはめて点検してください。

横にスクロールできます
領域チェック項目確認
取引先主な取引先がインボイス(登録番号)を必要としているか確認したか
取引先取引先が消費者中心か、課税事業者中心かを把握しているか
税負担登録した場合の納税額の見込みを試算したか
税負担2割特例・簡易課税・本則課税のどれが有利かを比べたか
税負担2割特例・3割特例の対象期間(時点)を確認したか
手続き登録申請の方法(e-Tax・書面)と提出先を確認したか
手続き適格請求書の6項目が自分の請求書に入っているか確認したか
実務会計・請求書ソフトで登録番号・税率ごとの消費税額が正しく出るか確認したか
実務受け取ったインボイスと帳簿を保存する運用ができているか
出口登録をやめる場合の手続き・期限・2年縛りを把握しているか

チェックの内容は、判断に迷う部分を税理士に相談しながら確かめると、より確実になります。 制度は改正で変わる項目があるため、最新の情報をもとに点検しましょう。

参考:国税庁「インボイス制度について」

インボイス対応を相談できる税理士は「クラウド税理士ナビ」で探せます

「クラウド税理士ナビ」は、freee・マネーフォワード・弥生に対応した、デジタルに強い税理士を厳選して比較・紹介するメディアです。掲載しているのは、クラウド会計での記帳・申告に対応し、オンラインでのやり取りやレスポンスの速さを大切にする税理士。ご希望の地域・業種・使いたい会計ソフト・依頼したい業務に合わせて紹介するため、会計ソフトに不慣れな税理士に当たって後悔する、という失敗を避けやすくなります。

ご利用は無料です。「クラウド税理士ナビ」に一括でお問い合わせいただくと、ご状況をうかがったうえで、条件に合うクラウド対応の税理士を複数おすすめ紹介します。紹介された税理士は、料金・対応範囲・相性を確かめてから選べるので、自分で一から探す手間をかけずに、納得して依頼先を決められるでしょう。インボイス登録の判断や対応を相談したい方は、まずお気軽にご相談ください。

自分に合う税理士を無料で紹介してもらう

まとめ

インボイス制度とは、正確な税率と消費税額を伝える適格請求書をやり取り・保存することで、買い手が仕入税額控除を受けられる仕組みです。個人事業主・免税事業者にとっては、登録して課税事業者になるか、免税のままでいるかの判断が大きな分かれ道になります。登録は義務ではありません。取引先がインボイスを必要とするか、登録した場合の税負担はどうかで決めるのが基本と言えるでしょう。2割特例は令和8年で終了し個人事業者には3割特例が設けられること、仕入れの経過措置は70%→50%→30%と段階的に引き下げられること(2026年6月時点)など、最新のスケジュールを押さえること、そして登録のやめ方まで理解しておくことが、後悔しない対応につながります。

クラウド会計に強い税理士に相談すれば、自分のケースでの有利不利も具体的に見えてきます。「クラウド税理士ナビ」では、freee・マネーフォワード・弥生に強い、デジタルに対応した税理士を無料で比較・紹介しています。インボイス登録や対応を相談したい方は、お気軽にご利用ください。

自分に合う税理士を無料で紹介してもらう